外貨投資では成功できない、訳では無い

ビジネスの成功に絶対的な法則がある訳では無い、ということは多くのビジネスマンに理解してもらえるのでは無いだろうか。

だが、こと中国ビジネスになるとその法則があるかのように行動してしまう企業は多い。こちらのポストでもその一例を紹介したが、そのほかにあるものとしてベンチャー投資における外貨規制に関する人民元投資もその類だ。

中国でベンチャー投資をするにあたって、人民元投資ができるほうがいいのは確かである。が、人民元投資ができないと中国でのベンチャー投資で成功しないか、というとそれは違う。外貨で直接投資できる案件もあるし、いわゆる外資ストラクチャーを組んでいれば外貨での投資も可能だ。シードステージでの投資はしにくくなるかもしれないが、ベンチャー投資はシード案件だけではないし、本当にいい案件ならアーリーステージやグロースステージでも投資のチャンスはある。人民元投資に固執するのではなく、外貨投資を前提にどのように案件ソーシングするか、投資交渉を行うかを検討したほうが良い。

市場に応じて戦略・戦術を変えていくというのはビジネスの基本であり、中国でのベンチャー投資についても同じである。

他社事例より自社事例

「中国で成功している外国企業はあるのか?」
「同業ではあるの?」
「日本の同業では?」

中国でのビジネス展開にあたり、市場調査が重要であるのは言うまでもない。その一環として他社事例を検証するのも重要。
ただ、あまりにも他社事例の研究に固執するあまり、時間と費用を浪費してビジネスチャンスを失っている企業も多いように思う。

同業が軒並み失敗しているなら、確かにその業界に何か問題があるのかもしれない。
とはいえ、日本企業がうまく行っていないだけであって、欧米の同業や中国ローカル企業は順調に成長している分野がほとんど。
そして、仮に他社がうまく行っているからと言って、詳細に研究してその通りやってみても自社がうまく行くわけではないし、えてして、詳細に研究したにもかかわらず成功事例通りやらずに、自社なりの“アレンジ”を加えて失敗してしまっているケースも多い。

失敗を恐れて事例研究に時間を費やすくらいなら、やってみて早めに失敗してみて、その失敗から学習し、修正していくほうが良い。
他社事例より自社事例を蓄積することで他社にはない強みがつくられる。

体制整備の難しさ

事業立ち上げ期の難しさの一つに、結果(新規顧客獲得や売上計上など)とプロセス(各種マニュアル化やチーム構築など)の両面を同時に追い求めなければならないことが挙げられる。

営業担当者や現場で新たな顧客と対峙している担当者からすると、目の前にあるビジネスチャンスを最大限獲得するために、雑多なことまでついつい自分でやってしまう。中長期的な目線を持つと、チームを作り、顧客への攻め方・ルールを決め、営業資料などを整備することが必要であることは分かる。だが、立ち上げ期では一人ですべてできてしまうために、他のメンバーや部下に任せることで短期的に営業成績の鈍化や顧客からのイメージが悪くなることを心配して、プロセス構築に時間・労力を割かない傾向にある。
一人でできる間であれば、また、一人でできるようなビジネスであれば問題ないのだが、そうでない場合にはある日突然ビジネスが止まってしまう可能性もある。1~30~50と顧客を順調に伸ばしてきたかと思うと、いきなりその成長が止まってしまうのである。

一方、経営側にも同じような悩みがある。「xx万円を使ってプロセス整備すればxx万円の売上・xx件の新規顧客が見込める」と分かれば誰でもその実行可否判断ができる。が、現実はそう単純ではないし、新規事業であればなおさらわからないことが多い。そういった状況の中でいかに適切に、事前に体制整備やプロセス整備の指示ができるか、そういう“将来への投資”の判断ができるか、がマネジメントにとっての重要な資質の一つになる。

ベンチャー企業など小さな組織であれば、上記の営業担当と経営側が近いもしくは同じことが多いので、コミュニケーションを密することで比較的判断しやすい。が、大きな企業における新規事業担当部署であると、この判断に非常に時間がかかるうえ、相互に相手の状況を理解しにくいので、プロジェクトの進捗スピードが鈍化したり、時には止まってしまう。
いわゆるプロジェクトマネジャーやプロジェクトリーダーと呼ばれる人の技量の見せ所であると同時に、難しさでもある。

ベンチャーの資金調達 ~成長ステージとValuation~

ベンチャー企業が資金調達をする場合(上場企業でも基本的には同じだが)、株価は高ければ高いほうが良い、とは限らない。

ベンチャー企業にとっての、資金調達の対価は株式であり、事業運営及びその成長のための資金調達をする代わりに会社の一部を売るともいえる。従って、創業メンバーの持株比率を高く維持するためには、より高い株価(Valuation)で資金調達をすることが良いことのように思える。
事業運営をする創業メンバーと、VCなどの外部投資家との利害関係を一致させるためにも、創業メンバーの持株比率をある程度高く維持しておくことが良いとも言える。創業メンバーの持株比率があまりに低くなりすぎると、将来的に「株価を上げよう」というインセンティブが薄れてしまうからである。

しかし、一般的にうまくいっているベンチャー企業は資金調達のたびに(Series A、B、C…と進むにつれ)Valuationが上がっていくことが期待されるので、あまりに高い株価は次の資金調達Roundへのプレッシャーにもなる。上場企業と違って株価が頻繁には表に出てこないベンチャー企業にとって、直前のRoundよりも株価が低くなってしまうことはDown Roundと呼ばれ、あまり名誉なこととは言えないからである。

ベンチャー企業の資金調達については、創業メンバーの持株比率と次のRoundでの株価を意識しつつ、今の株価と資金調達額を決めていかなければならない。いわゆる「資本政策」と呼ばれる戦略立案のプロセスである。

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法律と実務と案件の中身と

中国のビジネス推進において留意すべきことの一つに、法律と実務と案件の中身が「異なる」ことがある、ということである。

インターネットビジネス従事者にはよく知られるICPライセンスであるが、法律上は外資は過半を超えなければ良いと読める。ただ、実務は少し異なり、外資が少しでも入っているとその企業のライセンス申請は認可されない。なので、ネットビジネスをやろう/中国のネットビジネスに投資しようとすると、いわゆるVIEストラクチャーを組む必要が出てくる。

ただ、弁護士に正面から相談しに行くと「法律上は外資も認められていますから、わざわざ特別なストラクチャーを組む必要はありませんよ」と言われる。ここが、中国ビジネス経験者といわゆる日本本社との食い違いポイントとなる。「実際にはできません」という担当者と「弁護士は良いと言っているじゃないか」という本社。実際にやってみればわかるのだが、そう簡単にライセンスは下りない。当局も法定されていない以上「外資はダメ」とは言わず、申請からほぼ無期限の「審査期間」に入る。

もう一つ留意すべきは、案件の中身の精査である。中国もグローバル化の流れに乗り、各方面で規制緩和されている。「某市の某特区で外資のビジネスも可能になった」「実際に1号案件も出ている」という話を聞くことがある。

これもよくよく1号案件の中身を聞くと米国市場に上場している中国企業の子会社であったりもする。米国に上場しているのであるから純粋な中国企業ではない。しかし、だからと言って、そういう子会社と(純粋)日本企業の取り扱いが同じようになるかどうかは分からない。上記の通り当局での取扱いが異なることは十分想定される。

前例が無い、もしくは少ない案件については、政府系のコンサルティング会社等を使って、詳細に事前にビジネス推進の可否を調査する必要がある。

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意思決定者の取り込み

カスタマイズ企業が、顧客に楽しんでもらえる共同デザインの工程をうまく演出・提供すれば、その成果物に対する消費者の感銘や、払ってもいいと思う金額は、大量生産品に対するそれとは比べものにならない。
事業者がこの「自己満足」の概念で利益を得るには、顧客に委ねる作業が多すぎず少なすぎず適切な量であることが非常に重要だ
【「カスタマイズ 【特注】をビジネスにする新戦略」 アンソニー・フリン, エミリー・フリン・ヴェンキャット  CCCメディアハウス】

日本企業で中国ビジネスを推進する場合、結論から持っていくと、意思決定者は「ぽか~ん」としてしまう。

「忙しいマネジメント(意思決定者)だから結論から示したほうが良いかな」と気を使って結論から言うと、思考停止して「分からないから判断できない」となって、前に進めず、かといって後ろにも進めない。この時には、戦略立案の「工程」に入ってもらうしかない。

そのプロセスに入らせて「自分で作った戦略感」を演出する必要がある。このときも、深く関与させすぎると時間も労力も膨大になってしまうので、戦略が出来上がったころにはマーケット環境が変わってしまっていたり、膨大な検討費用がかかってしまう。関与させる「作業が多すぎず少なすぎず適切な量」を保つことがプロジェクトマネジャーの腕の見せ所になる。

うまく戦略立案のプロセスをコントロールして、意思決定者が「自己満足」の概念で決定するようにしなければならない。本物のマネジメントなら、「そこはプロジェクトマネジャーの業務分掌」として、きちんと権限と責任を設計してほしいのではあるが、日本の企業でそこまでできているところは極めて少ない(無い!?)。

本社所在地の移転

中国で本社の登記場所を移転するのは難しい。

税制や各種外資規制の緩和を行うため、特区をつくっている地方政府が多い。主な理由は企業を誘致して雇用を創出したり、税収アップを目指すものだ。この優遇を受けるための条件は、会社(本社)をその特区に登記することというものが多い。このため、日本企業ならそこに進出拠点を登記したり、既に事業を行っている中国企業などは実際の事業の運営場所は今のままで登記場所だけ変更することも考える。

が、登記だけ特区内にして、実際の運営場所を異なる場所にするといった「いいとこどり」するのは難しい。

特区は新開発エリアや辺鄙な場所にあることも多く、事業運営するには従業員の採用が難しく、その他事業運営にも非効率が生じる。また、優遇政策を実施する地方政府の目的が経済の活性化であったり、税収の増加であるので、他地域からの「移転」は特に難しくなる。現在の登記場所の地方政府が移転を許さないからである。

「xx市で規制緩和して、外資も事業がしやすくなるらしい」という話はよく聞くが、後々の事業展開もよくよく考えて進出を検討したほうが良い。

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本当にWin-Winの関係が作れているか?

中国でビジネスをしたい日本企業。日本でビジネスをしたい中国企業。でも、独自では進出できないし、急速な販路の拡大も見込めない。このため、現地の企業との提携が必要だと感じている。
ここまではよくある話で、日中数多くの会社がそのやり方を模索している。

しかし、提携話を持っていく際に「ちゃんとした」Win-Winの提携案を考えられているところは少ない。

「自分たちは中国から旅行客を連れて行ける。日本のビジネスパートナー(となる企業)は行き先(買い物、観光など)をアレンジしてくれれば良い。自分たちは旅行客から手数料を取るので、その一部をパートナーに還元する。」
これは中国のとある旅行系ベンチャーからの相談。一見すると良さそうに見えるが、効率的な拡大を考えすぎて日本の大手企業と組もうとすると、受け手の日本企業から見るとほとんど旨味の無い提携になってしまう。数百億円を売り上げる会社に数百万円、多くても数千万円の話を持って行ってもなかなかすぐに「Yes」とは動けない。

「紹介手数料を払っても良いから顧客を紹介してほしい。」
日系企業による中国での販路拡大方針。消費者向けにしろ、企業向けにしろ、今や中国では「お金を燃やす」勢いでマーケティング費用をかけて数を取りに行く戦略が主流。そういう状況を知らずに「日本的な紹介料」を提示しても、中国方からすると「別の会社からの販促支援金のほうが断然に多いけど。。。」と言うことになる。

「日本の技術ベンチャーに開発委託したいので、提携のアレンジをしてほしい。」
いわゆる提携に伴うコンサルティングの依頼。M&Aや資金調達アドバイザーであれば、ある程度形式が決まっているし、「案件の終わり」が見えているので手伝いやすい。が、いわゆる事業提携の際にアドバイザーとして入ると、その業界、当事者の特殊な要因が多く、提携話をまとめるにも意外に時間と労力がかかる。このため、間に入るアドバイザーとしては、複雑な利害関係を調整するためのコストを織り込んでアドバイザー費用を提示したいところ。だが、依頼側からすると「そんなに高い金額!?」となりかねない。

自身がどの立場になるかは、案件により、場面により異なるとは思うが、本当の意味でのWin-Winを考えて提携話を進めていかなければならない。

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ベンチャーの資金調達 ~Valuationと調達額~

ベンチャー企業が資金調達するにあたって投資家との対応、交渉、調整はかなりの手間である。
通常、ベンチャーのCEOや創業チームは「やりたいこと」が先にあって起業しているから、資金調達については疎かったり、面倒だと思ったりしてしまいがちである。

単純に言うと、
「より高い時価総額(Valuation)でより多くを資金調達する」
ことがベンチャー企業側としては良いことになる。自身の経営権(議決権)も維持できるし、多額の資金調達ができれば企業運営のための資金繰りも楽になり本業に集中することができる。
一方、投資家側にとっては、
「より低い金額(Valuation)でより多く投資する」
ことが経済合理的になる。

しかしながら、過度に創業者(主要メンバー含め)の株式比率が下がってしまう(≒投資家の株式比率が上がってしまう)と、創業者による事業へのモチベーションを失ってしまったり、時価総額の極大化という目的を一致して持てなくなってしまったりする。
また、必要以上に資金調達をしてしまうと、事業運営への緊張感を失ってしまうので、投資家としては「必要な分だけ」「次の事業マイルストーンを達成する分だけ」資金供給したいと考える。

このため、適度なValuationで適度な金額を調達することが重要になる。あまりにValuationを上げて資金調達してしまうと、「その次」の資金調達がしにくくなってしまう(次の投資家がついてこられなくなる)ので、Valuationを上げるだけ上げて資金調達することは、必ずしも善とはなりにくい。