外貨投資では成功できない、訳では無い

ビジネスの成功に絶対的な法則がある訳では無い、ということは多くのビジネスマンに理解してもらえるのでは無いだろうか。

だが、こと中国ビジネスになるとその法則があるかのように行動してしまう企業は多い。こちらのポストでもその一例を紹介したが、そのほかにあるものとしてベンチャー投資における外貨規制に関する人民元投資もその類だ。

中国でベンチャー投資をするにあたって、人民元投資ができるほうがいいのは確かである。が、人民元投資ができないと中国でのベンチャー投資で成功しないか、というとそれは違う。外貨で直接投資できる案件もあるし、いわゆる外資ストラクチャーを組んでいれば外貨での投資も可能だ。シードステージでの投資はしにくくなるかもしれないが、ベンチャー投資はシード案件だけではないし、本当にいい案件ならアーリーステージやグロースステージでも投資のチャンスはある。人民元投資に固執するのではなく、外貨投資を前提にどのように案件ソーシングするか、投資交渉を行うかを検討したほうが良い。

市場に応じて戦略・戦術を変えていくというのはビジネスの基本であり、中国でのベンチャー投資についても同じである。

ファンドの立ち上げ~運営

投資ファンドの立ち上げから運営における重要な以下の各項目について必要な考慮点を簡単にまとめたいと思う。
①ファンドコンセプトの策定
②ファンド事業計画の策定
③投資対象の発掘・投資案件検討
④ファンド投資家との折衝・協働
⑤その他ファンド管理業務

①ファンドコンセプトの策定
ファンドコンセプトが一番重要となるのは、外部投資家から出資を受け入れる場合など対外的な説明時だろう。ファンド運営者からすると、儲けられると思える案件についてはどんな案件にでも投資したいし、出資を受ける側にしても、出資を受けられるのであればどういうコンセプトのファンドであってもお金はお金である。投資家としても、資産運用目的での出資あれば設けられればなんでも良い、となりがちではあるが、それでも自身のお金を預けるのにどういう使われ方・どういう領域に投資されるのかについてはある程度縛りたい。また、事業開発や市場調査目的で投資するようなファンドであれば、自身の興味領域に合った案件に投資してくれるファンドにしか投資しない。

②ファンド事業計画の策定
ファンドの事業計画、特に財務面は、事業会社のそれとは大きく異なる。投資時に資金が大きく流出し、投資先が大きくなるのを待つ間にはさほど資金流出はしない。そののち、Exit時にはキャピタルゲインなどと同時に投資金額が戻ってくるので資金流入が多くなる。こうした流れと合わせるように、通常のファンドであると、10年のファンド運用機関のうち、最初2~3年を出資期間に定め、投資活動を積極的に行い投資残高を積んでいく。途中4~8年目くらいは既存出資先の追加投資による資金流出や早期Exit案件に伴う資金流入があろう。そして最後の9~10年目には積極的にExitを試み、ファンドへの資金流入が生じる。実際には2年程度のファンド延長期間が設定されているので、全て投資回収するまでには10年以上かかることが多い。こうしたファンド運営の中で、新規投資案件の進み具合でいつ投資家から出資を受けるか(キャピタルコールするか)、Exit案件の進捗具合でいつ投資家に利益を分配するかを検討しなければならない。

③投資対象の発掘・投資案件検討
投資案件の発掘やその検討がファンドの最もキモであり、その良し悪しでファンドの運用成績が決まる。あらゆるところにネットワークを張って、良い案件が来るのをキャッチしなければならない。良い案件が来た時にも、すぐに協業他社にも知れ渡ってしまうので、慎重かつ積極的に案件を推進していかなくてはならない。設立間もないベンチャー企業では検討する為の情報が少ないこともある。そうしたときに迅速に判断して投資実行することが、同業他社を出し抜くために必要な事である。そのためにも、投資のための基本的な金融知識や契約知識を備えた案件担当者が重要になる。

④ファンド投資家との折衝・協働
ファンドコンセプトでも述べたように、様々なファンド投資家がいて、様々な目的で投資をしている。4半期ごとの説明や、年1回のファンドの運用成績の説明が重要であることはもちろんであるが、投資家の意向により市場環境の説明や、投資先とのミーティング・事業開発アレンジなどをしなければならない。

⑤その他ファンド管理業務
上記以外にもファンドを管理するための業務は多岐にわたり、ファンド運営管理会社はまさに会社であるため、会社としての労務、人事、経理、法務業務などがある。

投資環境の変化

中国の投資環境の変化はとてもめまぐるしい。変化の予想はムダであり、今のままの環境が続くと想定することも間違い。変化した時にいかに柔軟に素早く対応できるかを常に考えなければならない。

中国では業種別の外資規制や外国為替市場における規制が数多くある。そしてその規制は日々変わっており、全体としては緩和される方向である。ただ、大きな国であるがゆえに、市などの地域単位で規制が緩和されることも多く、特区もある。

こうした中国市場で中長期の投資を行ったり、新規の事業開発を行う場合、変化の予測は無理であるばかりでなく無駄である。どうなるかを心配して事前にあれこれ可能性を考えそれぞれについて対策を考えるよりも、変化することを前提と受け入れたほうが良い。投資環境が変化した場合にどのように対応するか、そういう視点で市場調査やネットワークづくりをすることが大切。

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内資化するとは

中国の投資において最近の潮流のひとつ内資化。規制業種に対する外資受け入れの一つの方法として広く使われているWFOEストラクチャーを解消して中国人・中国法人のみの株主構成にすることを言う。

手続きとしては、
①中国内資企業が資金調達主体であるVIEの100%子会社(これもVIE)を買収
②買収資金を受け取った資金調達VIEを解散・清算
である。この過程においては、各種契約文書作成のほか、当局の手続きも必要なため数か月~1年以上かかる。

外国人株主としては、このタイミングでExit(株式売却)してしまうか、代理保有のような形で実質的に継続保有するか、大きく2つの対応がある。

ファンド投資か個社投資か

投資の目的が違えば、投資の方法も異なる。目的を決めなければ投資方法は決まらない。

中国でビジネスをすることが目的であれば、個社投資のほうが良い。最初のうちは、ネットワークや視野の拡大という意味からファンド投資が有効かもしれないが、実際のビジネスには携われない。GP会社によっては、四半期のレポートのみや年数回の(セミ)アニュアルミーティングのみになって、実際のベンチャー企業、投資先企業との接点を持ちにくい。その点、個社投資であれば、直接株主となるわけだから、ビジネスオペレーションにもかかわりやすい。もちろん、数多くいる少数株主の一人であれば、株主の権利も行使しにくくなるが。

ファンド投資の良さは、儲けにある。中国ローカルのGPが選んだ中国ローカル企業への投資であるから、外国人が選んで投資するよりもその成功確率は高い。効率的に市場の成長性の利益を享受するならファンド投資のほうが良い。

WFOE化するとは

中国で外資規制がある業種に投資する場合には、WFOEストラクチャーないしはVIEストラクチャーと呼ばれる投資スキームを使って投資する。

実際には下図の通り、左の単純な株主①②と運営会社という状態から、右のようなスキームを構築して実質的な株主になる。SPVやWFOE、矢印で示される契約書等を作って、実質的に運営会社をコントロールするとともにその利益を還元できるようにする。

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内資化

中国のベンチャー企業の流行の一つは「内資化」。

今までは中国国内の投資家層が成熟していなかったため、米国など海外の投資家から資金を調達せざるを得なかった。一方、ネットや金融サービスなど、外資の投資が規制されている業界も数多くある。これに対する一つの解が、WFOEストラクチャーやVIEストラクチャーと呼ばれるものであった。

しかし最近は、中国国内の投資家市場の厚みが増し、わざわざ海外から資金調達する必要が無くなってきた。特に、中国国内市場を対象としたサービスを提供するベンチャー企業にとっては、海外の投資家よりも中国国内投資家のほうがより正確に、より高く、そのビジネスを評価してくれる。そして、中国国内の株式市場の高揚。

こうしたことから、初めから中国国内投資家のみを受け入れるベンチャーも出始めている。そして、過去に1~2度海外投資家から資金調達したベンチャー企業も、WFOEストラクチャーを止めて純粋な中国内資企業になろうとしているところも多い。