市場の把握

中国の市場を把握するのは難しい。国家の統計もあるし、各種団体・協会のデータも存在するのはしているが、数字のズレが生じるのも事実。様々な調査会社もあるが、国土が広い分、きちんと把握しようとすると調査費用も馬鹿にならない。

ネット社会がどんどん進みサービスが充実して、消費者の行動が(プライバシーが守られた状態で)把握できるようになれば、消費者関連のデータの正確性も向上するのかもしれない。

その状態になるまでは、各種データや、調査、肌感覚などを総合的に駆使して市場を把握するしかない。

【参考記事】Baidu Creates Own Indexes to Paint Picture of China’s Economy

中国ビジネスの強さ

中国は高成長を続けているうえに、(国土が)広く(人口が)多い。

純粋に市場が大きいということの力は大きい。多少の人が金持ちになって豊かな暮らしをしても、まだまだそのレベルに達しない人がたくさん存在している。中国の起業家に「そういうサービスの競合が出てきたらどうする?」と聞くと、「中国は広い。いくらでも市場はある。」と返ってくることが多い。もちろん、ビジネスをするにあたって市場規模や競合状況を十分に検討しなければいけないが、日本やその他の先進国とは違う前提条件でビジネスが進んでいることも十分認識しなければならない。

中国のビジネスチャンスの多様さ奥深さは、把握しきれないほどまだまだあると言える。

面積と人口とを有する国土は、本来の戦闘力を賄う資源であるばかりでなく、それ自体が戦争において効力を発揮する量の有力な部分をなすのである 【p.39 「戦争論(上)」 クラウセヴィッツ 岩波文庫】

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サービス輸出の方法

モノの輸出でも基本的には同じであるが、日本のサービスを中国に輸出する場合、次のような手順で進んでいく。
中国語化⇒ローカル化⇒テスト導入⇒販売⇒組織拡大

中国語化 : 今まで日本で使っていたものを中国語に翻訳するということ。専門用語や最新のネット用語などはうまく中国語に訳さないと、意味が通じにくくなる。

ローカル化 : とりあえず中国語化したものをベースに、ターゲットとなりそうな顧客の使い勝手を調査する。純粋なネットサービスならばPC一台(携帯1台)で出来るかもしれないし、何かの機器にインストールして使うようなものであれば顧客先に「設置」して使い勝手を聞く必要があるかもしれない。使い勝手を聞いて、プロダクトの過不足を把握し、中国市場にマッチしたサービスに改善していく。

テスト導入 : ある程度プロダクトが出来上がったら、実際に顧客に使ってもらって更に詳細なチューニングを行っていく。プロダクトの改善だけではなく、その導入にあたっての関連するサービスやプロセスの整備・改善なども含まれる。

販売 : テスト導入で安定的なサービス提供が確認されれば実際に販売して、契約書(申込書)や資金回収のプロセスをチェックする。

組織拡大 : 売れる目途が立てば、手作業や個別対応部分を減らし、組織として対応できるよう各プロセスをマニュアル化していく。その過程で人員も一気に拡大していく。

重要なことは、各ステップをとにかく高速で試行錯誤を繰り返し、ステップを進んでいくとともに必要であればステップを戻ることも検討する。
そして、テスト段階で極力多くの種類の顧客にあたることがサービスを完全なものに近づけていく事にも留意が必要である。ステップの進行を気にしすぎて特定のケースのみに特化したサービスを作ってしまうと、いざ販売拡大のフェーズで「意外に市場が小さかった」ということにもなりかねない。どの顧客セグメントが大きそうか、ということに目途をつけるという意味でも、テスト段階で多くの種類の顧客に当たり、「このタイプの顧客の数はどれくらいか?」ということを常に考えることが重要。

コピー天国でイノベーションが出てくる

知的財産を権利として守らない社会は困るが、良いもの、成功しているものを何でもコピーする市場は時には強さを発揮する。

中国のベンチャー企業は、自分自身のビジネスモデルや製品・プロダクトが真似される可能性のあることを前提に事業推進を行うから、そのスピード感はすさまじい。唯一ともいえる差別化がスピードになるからだ。他社よりも早く動いて一定規模の市場シェアを握る、それが参入障壁になるという考え方だ。ただ、一定規模の市場シェアと言っても、市場が巨大であるためにマーケットリーダーとなるほどのシェアを握ることも非常に困難である。Grouponモデルと言われる共同購入というビジネスモデルが流行った時、中国には一時1,000を超える類似サイトができた。その後、同業同士での買収や自然淘汰により美団Meituanというサイトが生き残った。

そういった市場の中で消費者は巧みに使いやすいサービスに簡単に移っていくために、今や単純なマネだけでは生き残れないのは誰しも知っているので、企業側も次から次へと便利なサービスを打ち出す。便利さだけで言えば、日本やアメリカよりも便利なサービスはたくさんある。WeChatはその最たるもの。

コピー前提だからイノベーションが生まれ、巨大なベンチャー企業が誕生し、結果的に社会として強くなっていく。

北京の強さ、上海の強さ、深センの強さ。

中国は都市ごとにその文化、歴史、経済の基盤が違い、一つの国の都市とは思えないことが多々ある。

ベンチャービジネスについても同じである。北京では、中国のシリコンバレーと言われる中関村に始まり、各地でベンチャー企業の集まりが開催されたり、インキュベーションセンターも各地にある。VCなど数多くの投資家もオフィスを構えており、ベンチャーを興す人、それをサポートする人の厚みが違う。上海も同様で、浦西の古い建築物をリノベーションしたおしゃれなインキュベーションセンターがあったり、各地でベンチャー企業の催しがある。深センは、香港への玄関口ないしは輸出加工工場として発展してきたためか、製造業を背景としたモノづくり系のベンチャー企業が多い。安くて高品質な製造工場と巧みに連携したIoT企業がたくさん出てきているし、何よりもTencentの城下町として起業家の人材プールもある。

もちろん、それ以外にも、伝統的にゲーム産業の強い成都や、Alibaba本社のある杭州など中国各地で競うようにベンチャー企業が生産される。政府もこうした動きを後押しして、補助金を出したり、政府系の建物をインキュベーションオフィスに改装してベンチャー企業に安く入居させたり、自由貿易区を作って規制緩和特区を作ったりしている。

今やどの都市に行っても中国ベンチャーの熱気であふれている。

2線級都市はまだまだいける

中国での事業展開というと、北京、上海など1線級都市がすぐに思い浮かぶが、主戦場はその次の2線級都市と呼ばれるところ。

2線級と言っても数百万人規模の都市であるし、十分な規模はある。一方、1線級都市ほど飽和感は無く、まだまだ伸びている途中の市場でもある。中国の企業であってもまだまだ開拓中の市場。1線級都市に隣接している都市も少なく、高速鉄道で数時間や飛行機に乗っていくような場所もある。単独の市場としてやっていかなければならないローカルサービスも多い。

日本企業にとってファーストターゲットを2線級都市に定めるのは難しいし参入決断もしにくい場所ではあるが、2線級都市はまだまだチャンスがあるし、3線級都市でも数十万人規模の市場であるからなおさらチャンスがある。

チャンスしかない!?

「最近中国で面白いビジネスは?」と聞かれることがよくある。

漠然と聞かれても困るのだが、成熟している日本から考えると、理解できなくもない質問。なぜなら、新しい領域、新しいモデルでビジネスを構築していかないとなかなか成功にたどり着かないから。

でも、中国の場合は、市場自体が成長しているし、日本以上に自由競争の部分もあるので、至る所にチャンスがある。13億人もいる市場だから、同じようなチャンスを狙ってくる競争相手も多いが、それでも考えれば考えるほど、いろんなところにビジネスチャンスはある。

単に「面白いビジネス」を漫然と探すのではなく、特定の領域であっても、既存のビジネス領域であっても、やり方によっては、市場の切り込み方によってはまだまだチャンスはある。

日本ローカルが中国で受ける

日本だけでしか受け入れられないと思っているビジネスが中国でも実は意外にそれなりの規模になる。

例えば、日本の中学受験コンテンツは中国在住日本人の必需品。

とはいえ、ニッチマーケットなので身軽に事業展開することが必要。