外貨投資では成功できない、訳では無い

ビジネスの成功に絶対的な法則がある訳では無い、ということは多くのビジネスマンに理解してもらえるのでは無いだろうか。

だが、こと中国ビジネスになるとその法則があるかのように行動してしまう企業は多い。こちらのポストでもその一例を紹介したが、そのほかにあるものとしてベンチャー投資における外貨規制に関する人民元投資もその類だ。

中国でベンチャー投資をするにあたって、人民元投資ができるほうがいいのは確かである。が、人民元投資ができないと中国でのベンチャー投資で成功しないか、というとそれは違う。外貨で直接投資できる案件もあるし、いわゆる外資ストラクチャーを組んでいれば外貨での投資も可能だ。シードステージでの投資はしにくくなるかもしれないが、ベンチャー投資はシード案件だけではないし、本当にいい案件ならアーリーステージやグロースステージでも投資のチャンスはある。人民元投資に固執するのではなく、外貨投資を前提にどのように案件ソーシングするか、投資交渉を行うかを検討したほうが良い。

市場に応じて戦略・戦術を変えていくというのはビジネスの基本であり、中国でのベンチャー投資についても同じである。

ベンチャーの資金調達 ~成長ステージとValuation~

ベンチャー企業が資金調達をする場合(上場企業でも基本的には同じだが)、株価は高ければ高いほうが良い、とは限らない。

ベンチャー企業にとっての、資金調達の対価は株式であり、事業運営及びその成長のための資金調達をする代わりに会社の一部を売るともいえる。従って、創業メンバーの持株比率を高く維持するためには、より高い株価(Valuation)で資金調達をすることが良いことのように思える。
事業運営をする創業メンバーと、VCなどの外部投資家との利害関係を一致させるためにも、創業メンバーの持株比率をある程度高く維持しておくことが良いとも言える。創業メンバーの持株比率があまりに低くなりすぎると、将来的に「株価を上げよう」というインセンティブが薄れてしまうからである。

しかし、一般的にうまくいっているベンチャー企業は資金調達のたびに(Series A、B、C…と進むにつれ)Valuationが上がっていくことが期待されるので、あまりに高い株価は次の資金調達Roundへのプレッシャーにもなる。上場企業と違って株価が頻繁には表に出てこないベンチャー企業にとって、直前のRoundよりも株価が低くなってしまうことはDown Roundと呼ばれ、あまり名誉なこととは言えないからである。

ベンチャー企業の資金調達については、創業メンバーの持株比率と次のRoundでの株価を意識しつつ、今の株価と資金調達額を決めていかなければならない。いわゆる「資本政策」と呼ばれる戦略立案のプロセスである。

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CVCの使い方

一つの方法論であらゆる問題を解決することはできないが、それでもCVCというのは多くの問題を解決できる方法だろう。

Financial Returnを追求するのか、戦略的な意図(事業部門とのシナジーなど)を追求するのか、その両方をバランスさせるのか、CVCの目的を明確にする必要があることはもちろん大切である。
また、いわゆるR&D部門やM&A部門といった企業内の他の部門との連携も重要である。最新のビジネストレンドや情報収集を目的としてR&D部門に還元することや、良さそうだけれどもいきなり100%買収しない場合に少数株主として出資するなど、活用方法はさまざまである。その場合には、単なるCVC以上の役割が必要になるので、部門間の調整を図ることができる組織設計が必要である。

きちんと組織設計すれば、CVCというのは強力な武器になる。

【参考記事】Corporate venture capital can pay, but only if you get the structure right
【関連記事】CVCとVCの違い

持分比率の増減と時価総額の増減

・増資に参加しなければ株式の持分比率は下がる。
・既存株の譲渡では当該会社の資金調達にはならない。
・アップラウンドであれば持分の価値総額は上がる。

ベンチャー企業に投資する際には、特にこの3つの事実とそれぞれの関係性を理解しておかなければならない。
ベンチャー企業は事業が未成熟であるために、増資を常に考えなければならない。本業で(売上など)資金流入が少ないために基本的に資金不足になりがちである。一方、事業拡大などやりたいことはたくさんあるために事業資金は必要となる。

ベンチャー企業が投資家から資金調達をするのは、通常、新株の発行を伴うことが多いので既存株主がその資金調達ラウンドに参加しなければ既存株主の持分比率は下がる。
ここで、既存株主が持分比率を維持するために、(創業者など)他の既存株主から株式を譲渡してもらうことが考えられる。ただし、ここで支払われるお金はベンチャー企業自体には入らないので、将来的な事業成長のためには使えない。譲渡元の株主に現金が入るだけである。
一方、持分比率が下がったとしても、新規の資金調達がアップラウンドであれば=株価(時価総額)が上がっていれば、持株の価値の総額は上がっており、投資としては順調に推移していると言える。

ファンドの立ち上げ~運営

投資ファンドの立ち上げから運営における重要な以下の各項目について必要な考慮点を簡単にまとめたいと思う。
①ファンドコンセプトの策定
②ファンド事業計画の策定
③投資対象の発掘・投資案件検討
④ファンド投資家との折衝・協働
⑤その他ファンド管理業務

①ファンドコンセプトの策定
ファンドコンセプトが一番重要となるのは、外部投資家から出資を受け入れる場合など対外的な説明時だろう。ファンド運営者からすると、儲けられると思える案件についてはどんな案件にでも投資したいし、出資を受ける側にしても、出資を受けられるのであればどういうコンセプトのファンドであってもお金はお金である。投資家としても、資産運用目的での出資あれば設けられればなんでも良い、となりがちではあるが、それでも自身のお金を預けるのにどういう使われ方・どういう領域に投資されるのかについてはある程度縛りたい。また、事業開発や市場調査目的で投資するようなファンドであれば、自身の興味領域に合った案件に投資してくれるファンドにしか投資しない。

②ファンド事業計画の策定
ファンドの事業計画、特に財務面は、事業会社のそれとは大きく異なる。投資時に資金が大きく流出し、投資先が大きくなるのを待つ間にはさほど資金流出はしない。そののち、Exit時にはキャピタルゲインなどと同時に投資金額が戻ってくるので資金流入が多くなる。こうした流れと合わせるように、通常のファンドであると、10年のファンド運用機関のうち、最初2~3年を出資期間に定め、投資活動を積極的に行い投資残高を積んでいく。途中4~8年目くらいは既存出資先の追加投資による資金流出や早期Exit案件に伴う資金流入があろう。そして最後の9~10年目には積極的にExitを試み、ファンドへの資金流入が生じる。実際には2年程度のファンド延長期間が設定されているので、全て投資回収するまでには10年以上かかることが多い。こうしたファンド運営の中で、新規投資案件の進み具合でいつ投資家から出資を受けるか(キャピタルコールするか)、Exit案件の進捗具合でいつ投資家に利益を分配するかを検討しなければならない。

③投資対象の発掘・投資案件検討
投資案件の発掘やその検討がファンドの最もキモであり、その良し悪しでファンドの運用成績が決まる。あらゆるところにネットワークを張って、良い案件が来るのをキャッチしなければならない。良い案件が来た時にも、すぐに協業他社にも知れ渡ってしまうので、慎重かつ積極的に案件を推進していかなくてはならない。設立間もないベンチャー企業では検討する為の情報が少ないこともある。そうしたときに迅速に判断して投資実行することが、同業他社を出し抜くために必要な事である。そのためにも、投資のための基本的な金融知識や契約知識を備えた案件担当者が重要になる。

④ファンド投資家との折衝・協働
ファンドコンセプトでも述べたように、様々なファンド投資家がいて、様々な目的で投資をしている。4半期ごとの説明や、年1回のファンドの運用成績の説明が重要であることはもちろんであるが、投資家の意向により市場環境の説明や、投資先とのミーティング・事業開発アレンジなどをしなければならない。

⑤その他ファンド管理業務
上記以外にもファンドを管理するための業務は多岐にわたり、ファンド運営管理会社はまさに会社であるため、会社としての労務、人事、経理、法務業務などがある。

ベンチャー投資で必要なこと

ベンチャー投資するうえで必要なことと言えば、金融と契約(法務)の知識、そして良い案件を見つけてこられるネットワーク。

DCFやMultipleといった一般的に理論的と言われるValuation方法が使いにくいのでベンチャーファイナンスは少し特殊な金融知識になる。契約書についても優先株などでの出資が一般的なので特殊な用語が多い。ただ、こうしたこと関連書籍を何冊か読み、2~3件投資してみれば基本型が分かるので知識獲得自体は難しくない。
やはり一番難しく、経験や勘が必要なのは良いネットワークを築くこと。ベンチャー企業の情報は未上場であるがゆえにただでさえ表に出にくいうえに、良い案件は誰しも囲い込んで極力外には出したがらない。何とか良い案件に投資して、実績として語れる案件をいくつ作れるか。良い案件に投資したことが評判になると、良い循環が生まれて新たな良い案件情報も入ってきやすくなる。こうしたことには「公式」は無いので、地道な活動も含めて粘り強く、でも効率的に行うことが必要。

CVCとVCの違い

事業開発やマーケットリサーチ等を目的としたCVCと、投資リターンの最大化を目指すVCとでは投資先に対する対応が異なる。

例えば、投資先が増資する場合。CVCは投資に伴う協業関係がうまく進捗していれば、資本関係での緊密化を目的に、追加で持ち分を増やすことを考えるかもしれない。一方、VCはExitのチャンスととらえ、新たに入ってくる株主に対して持分譲渡を選択するかもしれない。
投資先の事業運営について、VCは成長するかどうか利益貢献するかどうかが重要でその運営の仕方についてあまり細かいことを言わない。一方CVCの場合、成長や利益への要求は小さくても事業運営の仕方自体に口出ししてくるかもしれない。

同じVCというカテゴリの中でも投資の目的が異なれば、同じ投資先に対する事象についても、対応が異なる。投資される側のから考えると、どういう投資家から出資を受け入れるかは複合的に考えないといけない。

投資環境の変化

中国の投資環境の変化はとてもめまぐるしい。変化の予想はムダであり、今のままの環境が続くと想定することも間違い。変化した時にいかに柔軟に素早く対応できるかを常に考えなければならない。

中国では業種別の外資規制や外国為替市場における規制が数多くある。そしてその規制は日々変わっており、全体としては緩和される方向である。ただ、大きな国であるがゆえに、市などの地域単位で規制が緩和されることも多く、特区もある。

こうした中国市場で中長期の投資を行ったり、新規の事業開発を行う場合、変化の予測は無理であるばかりでなく無駄である。どうなるかを心配して事前にあれこれ可能性を考えそれぞれについて対策を考えるよりも、変化することを前提と受け入れたほうが良い。投資環境が変化した場合にどのように対応するか、そういう視点で市場調査やネットワークづくりをすることが大切。

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内資化するとは

中国の投資において最近の潮流のひとつ内資化。規制業種に対する外資受け入れの一つの方法として広く使われているWFOEストラクチャーを解消して中国人・中国法人のみの株主構成にすることを言う。

手続きとしては、
①中国内資企業が資金調達主体であるVIEの100%子会社(これもVIE)を買収
②買収資金を受け取った資金調達VIEを解散・清算
である。この過程においては、各種契約文書作成のほか、当局の手続きも必要なため数か月~1年以上かかる。

外国人株主としては、このタイミングでExit(株式売却)してしまうか、代理保有のような形で実質的に継続保有するか、大きく2つの対応がある。

ファンド投資か個社投資か

投資の目的が違えば、投資の方法も異なる。目的を決めなければ投資方法は決まらない。

中国でビジネスをすることが目的であれば、個社投資のほうが良い。最初のうちは、ネットワークや視野の拡大という意味からファンド投資が有効かもしれないが、実際のビジネスには携われない。GP会社によっては、四半期のレポートのみや年数回の(セミ)アニュアルミーティングのみになって、実際のベンチャー企業、投資先企業との接点を持ちにくい。その点、個社投資であれば、直接株主となるわけだから、ビジネスオペレーションにもかかわりやすい。もちろん、数多くいる少数株主の一人であれば、株主の権利も行使しにくくなるが。

ファンド投資の良さは、儲けにある。中国ローカルのGPが選んだ中国ローカル企業への投資であるから、外国人が選んで投資するよりもその成功確率は高い。効率的に市場の成長性の利益を享受するならファンド投資のほうが良い。