他社事例より自社事例

「中国で成功している外国企業はあるのか?」
「同業ではあるの?」
「日本の同業では?」

中国でのビジネス展開にあたり、市場調査が重要であるのは言うまでもない。その一環として他社事例を検証するのも重要。
ただ、あまりにも他社事例の研究に固執するあまり、時間と費用を浪費してビジネスチャンスを失っている企業も多いように思う。

同業が軒並み失敗しているなら、確かにその業界に何か問題があるのかもしれない。
とはいえ、日本企業がうまく行っていないだけであって、欧米の同業や中国ローカル企業は順調に成長している分野がほとんど。
そして、仮に他社がうまく行っているからと言って、詳細に研究してその通りやってみても自社がうまく行くわけではないし、えてして、詳細に研究したにもかかわらず成功事例通りやらずに、自社なりの“アレンジ”を加えて失敗してしまっているケースも多い。

失敗を恐れて事例研究に時間を費やすくらいなら、やってみて早めに失敗してみて、その失敗から学習し、修正していくほうが良い。
他社事例より自社事例を蓄積することで他社にはない強みがつくられる。

CVCの使い方

一つの方法論であらゆる問題を解決することはできないが、それでもCVCというのは多くの問題を解決できる方法だろう。

Financial Returnを追求するのか、戦略的な意図(事業部門とのシナジーなど)を追求するのか、その両方をバランスさせるのか、CVCの目的を明確にする必要があることはもちろん大切である。
また、いわゆるR&D部門やM&A部門といった企業内の他の部門との連携も重要である。最新のビジネストレンドや情報収集を目的としてR&D部門に還元することや、良さそうだけれどもいきなり100%買収しない場合に少数株主として出資するなど、活用方法はさまざまである。その場合には、単なるCVC以上の役割が必要になるので、部門間の調整を図ることができる組織設計が必要である。

きちんと組織設計すれば、CVCというのは強力な武器になる。

【参考記事】Corporate venture capital can pay, but only if you get the structure right
【関連記事】CVCとVCの違い

ビジネスを成功させるのか、プロセスを守るのか

新規事業開発や、海外事業への取り組み方を見ていると、ビジネスとして成功させることを目的としているのか、プロセス(案件の進め方)を守ることを重視しているのか分かりにくい企業が意外に多い。自分たちのやり方や、社内的に説明しやすいプロセスを守ろうとするあまり、ビジネス環境に対応できずに、結果的に成功確率を下げていることになっている。

社内的に踏襲されているやり方でやると、共感は得やすいし、予算など社内的資源を得やすいかもしれない。しかし、ビジネス環境は常に変化するものであるし、自社のステップや検討プロセスの結果を待ってくれるわけではない。プロセスAが達成されたら/結果が出たら次を考えたい、ということは一見わかりやすいロジックではある。しかし、「Aの次」を考えつつAを進めていかなければ、準備など到底間に合わないし、せっかく波に乗ったAの勢いを殺しかねない。

自分たちにわかりやすいプロセスを優先してビジネスチャンスを逃していては本末転倒としか言えない。

コピー天国でイノベーションが出てくる

知的財産を権利として守らない社会は困るが、良いもの、成功しているものを何でもコピーする市場は時には強さを発揮する。

中国のベンチャー企業は、自分自身のビジネスモデルや製品・プロダクトが真似される可能性のあることを前提に事業推進を行うから、そのスピード感はすさまじい。唯一ともいえる差別化がスピードになるからだ。他社よりも早く動いて一定規模の市場シェアを握る、それが参入障壁になるという考え方だ。ただ、一定規模の市場シェアと言っても、市場が巨大であるためにマーケットリーダーとなるほどのシェアを握ることも非常に困難である。Grouponモデルと言われる共同購入というビジネスモデルが流行った時、中国には一時1,000を超える類似サイトができた。その後、同業同士での買収や自然淘汰により美団Meituanというサイトが生き残った。

そういった市場の中で消費者は巧みに使いやすいサービスに簡単に移っていくために、今や単純なマネだけでは生き残れないのは誰しも知っているので、企業側も次から次へと便利なサービスを打ち出す。便利さだけで言えば、日本やアメリカよりも便利なサービスはたくさんある。WeChatはその最たるもの。

コピー前提だからイノベーションが生まれ、巨大なベンチャー企業が誕生し、結果的に社会として強くなっていく。

北京の強さ、上海の強さ、深センの強さ。

中国は都市ごとにその文化、歴史、経済の基盤が違い、一つの国の都市とは思えないことが多々ある。

ベンチャービジネスについても同じである。北京では、中国のシリコンバレーと言われる中関村に始まり、各地でベンチャー企業の集まりが開催されたり、インキュベーションセンターも各地にある。VCなど数多くの投資家もオフィスを構えており、ベンチャーを興す人、それをサポートする人の厚みが違う。上海も同様で、浦西の古い建築物をリノベーションしたおしゃれなインキュベーションセンターがあったり、各地でベンチャー企業の催しがある。深センは、香港への玄関口ないしは輸出加工工場として発展してきたためか、製造業を背景としたモノづくり系のベンチャー企業が多い。安くて高品質な製造工場と巧みに連携したIoT企業がたくさん出てきているし、何よりもTencentの城下町として起業家の人材プールもある。

もちろん、それ以外にも、伝統的にゲーム産業の強い成都や、Alibaba本社のある杭州など中国各地で競うようにベンチャー企業が生産される。政府もこうした動きを後押しして、補助金を出したり、政府系の建物をインキュベーションオフィスに改装してベンチャー企業に安く入居させたり、自由貿易区を作って規制緩和特区を作ったりしている。

今やどの都市に行っても中国ベンチャーの熱気であふれている。