大事かどうか

中国と仕事をする、海外業務を推進する場合に、頻繁に意思疎通の不具合が生じる。

そもそもの考え方の違いはもちろん、考えが同じであっても言語の表現の仕方で容易に衝突が起きる。業務やプロジェクトの進め方も異なり、事業パートナーであればさらに利害関係も異なる。新しい取り組みであれば、同じ会社の同じ部署の人間であっても、目的や思惑が異なるかもしれない。そうしたなかで、案件担当者としては丁寧に忍耐強く進めていくことが大切であるし、日本や中国の本社側もそういう状況を理解しなければならない。

いま面していることが大事かどうか、小さなことについては目をつぶって飲み込んで事を進めることができるか、そういう観点が重要。そして、そういう観点を持てる人を戦略立案担当者、企画推進者、責任者にし、きちんとその責任者に任せる体制にしなければならない。

段階的な中国進出

「中国は市場が分からないし、すぐに騙されると聞くし、怖い。」という。そこで、有効な方法が段階的な進出。

いきなり単独で会社を設立したり、何かに単独で投資をしたりするのではなく、パートナーを見つけて一緒にやる。その場合でも、ちゃんとビジネスパートナーとインセンティブが同じ方向に向くように設計しなければならない。

パートナーを見つける際も、いわゆるコンサルタントを雇って市場調査をするよりも、ローカルの同業者に投資したり同業エリアをターゲットにしたローカルのファンドに投資したりすることが有効なことがある。投資家としてその業界を効率的に見る、情報を収集することが可能になる。その投資先が将来の事業パートナーになるかもしれないし、そういう相手を紹介してくれるかもしれない。いずれにせよ出資金自体を最大のリスクとして、認識しておけばよく、うまくいけば投資に対するリターンも期待できる。パートナーを見つけた際も、製品・サービスを提供する側とそれを売る側という単純な関係にするのではなく、同じように製品・サービスに責任を持つ、売る場合にも同じようにそのリスクを分担するような仕組みづくりが大切。

ただ、これは日本であっても新たな領域へ進出すれば同じことだし、本当に中国特有で気にしなければいけないことは多くない。最初は有望そうなパートナーを見つける。見つける際にも効率的に。そして、パートナー関係を結ぶときにも単に売り買いの関係ではなく、極力同じ方向を向くように。相手のビジネスの成功が結果的に自社の成功にもなる、という関係が良い。

従業員教育の難しさ

ベンチャー企業は人材の力によるところが大きい。ベンチャー企業でなくとも、サービス業などの目に見えないものを製品として提供している企業にとっても人材の差が企業の差になってくる。

国有企業に代わるカッコいい大手企業が出てきたため、中国でも特定の企業で働いていることがステータスになることが出てきた。

が、それでも、大部分のベンチャー、中小企業で働くビジネスマンにとっては、会社へのロイヤリティよりも、自分自身の力を発揮する場、キャリアアップの場として職場をとらえていることが多い。このため、自分自身の力を認めさせるために張り切りすぎる従業員も出てくる。日本的には、まず全体を把握して、会社内やチームでの役割を認識して、ということを期待しがちである。しかし、キャリアアップのために自分の力を示したい、示さないといけないと思っている従業員にとっては全体の和を乱しても自分の力を示す必要がある。長期的に見て貴重な経験ができている若者も、目に見える形でのキャリアアップが見込めない場合は、すぐに転職を考えてしまう。

従業員の目的と業務をうまく組み合わせて指示を出すことができるか、中国ではより重要な観点である。

中国企業も待っている

中国企業も日本企業との提携を待っている。日本のプロダクトを中国で展開したいと思っている。中国の製品を日本市場に広めたいと思っている。

ただ、そのやり方が分からない企業が多く、何となくチャンスはありそうだからやりたいという「提携以前」の企業も多い。具体的にプロダクトやビジネスプランを持っている企業は少なく、何かできそうというだけの企業が多い。こうしたところの課題やニーズを一つ一つ紐解いていけばチャンスは多い。

自分自身にどういう価値があって、相手方に何を求めるか、それを検討すれば、組める相手は増えてくる。組み方も販売提携から資本提携まで様々ある。

中国企業もビジネスでやっている訳だから儲けを重視することは確かではあるが、日本企業をだまして儲けてやろう、という観点で最初から物色している訳では無い。お互いに通常のビジネスベースに乗る話かどうか、率直に議論すればいい。

2線級都市はまだまだいける

中国での事業展開というと、北京、上海など1線級都市がすぐに思い浮かぶが、主戦場はその次の2線級都市と呼ばれるところ。

2線級と言っても数百万人規模の都市であるし、十分な規模はある。一方、1線級都市ほど飽和感は無く、まだまだ伸びている途中の市場でもある。中国の企業であってもまだまだ開拓中の市場。1線級都市に隣接している都市も少なく、高速鉄道で数時間や飛行機に乗っていくような場所もある。単独の市場としてやっていかなければならないローカルサービスも多い。

日本企業にとってファーストターゲットを2線級都市に定めるのは難しいし参入決断もしにくい場所ではあるが、2線級都市はまだまだチャンスがあるし、3線級都市でも数十万人規模の市場であるからなおさらチャンスがある。

解決策よりも課題

日本でも中国でも、新規事業を考えるときもベンチャー投資を考えるときも、解決策よりも課題が重要と言われる。

とある機能を使ってどのようにビジネス化していくのかを考えるのは難しい。どんなものにでも使えそうに見えるし、誰も要らないようにも思える。お金を払っても欲しいと思えるような機能を考えだすというのは難しい。それよりも、困りごと、課題を見つけ、それを解決することでビジネスにしていったほうが考えやすいし立ち上がりやすい。顧客にとっても、その問題が大きければ大きいほど対価を払うインセンティブがわいてくる。

その点、成熟した日本市場よりも、中国のほうが課題を見つけやすい。確かに、北京や上海などの大都市は課題があってもそれに対するソリューションを提供する人は多いが、それ以外の都市ではまだまだ社会・生活向上のための課題は山積している。それをうまく見極められれば十分大きなビジネスになる。海外事業展開のチャンスがある。

こんなこともあんなこともできる、と機能面やソリューションを強調するよりも、どういう問題を解決したいのか、より明確な課題意識を持ち、マーケットに問うことが重要。

した方が良いことはやらない

事業開発、特に中国での事業開発については、しなければいけないことに集中し、した方が良いことはやらない決断が必要。

市場の変化は大きいし、日本での想定が通じないことが多い。そうした状況下では、あらゆる想定をして計画通りに進めていくことは不可能に近い。それならば、しなければいけないことが出てきたときに、その事柄にいかに早く適切に対応するかを考えたほうが良い。

詳細な市場調査より、実際に売る。売ってみればどれくらいのニーズがどこにあるか分かる。完璧なプロダクトを作るより、まずテストでもなんでも市場に出してみて問題が出たら修正したほうが、マーケットニーズに合った商品を作ることができる。真似されない対策をあれこれ考えるより、真似されたらどうするかを考える。

もちろん、今、対峙している事象がしなければいけないことなのか、した方が良いことなのか、その判断については、経験や知見も必要になる。そうした知見を基に、的確にしなければいけないことに集中しなければならない。

デジタル、シンプルなインセンティブ設計

中国でビジネスを作っていくとき、極力デジタルなシンプルなインセンティブ設計にしたほうが良い。

日本本社からすると距離も離れるし、文化も違う、管理する側は時には中国ビジネスを知らないこともある。そうしたときに定性的な要素の多い評価方法や、無理に細かいインセンティブ設計にしてしまうと、実情に合わせた事業運営ができないばかりか、日本本社と中国現地ビジネス担当者との間での齟齬が大きくなってしまう。攻略すべきは中国市場なのに、その前の戦略立案や方針策定で疲弊してしまう。

わざわざ中国でビジネスをすることを決めたのだから、小さなビジネスではなく大きなビジネスを作ろうとしているはずである。その時には大きな方向性やターゲットとするマーケット像を定めればよく、細かいステップ論はその時々で対応・修正すればよい。

代理店か直販か

製品・サービスの販売においての仕組みづくりは注意深く設計しなければならない。

代理店モデルを採用した場合、代理店は仕入価格と小売価格の差額で儲けられるため、一見商売の自由度が広がるように思える。が、製品提供側からすると、代理店にとにかく大量に売り込むことが目的化しかねないため、大量の在庫が代理店に滞留し小売先に製品が届いていないリスクが生じる。

直販を選択した場合、届けたい消費者に確実に届くことを確保できる。一方、自社で営業部隊を持つか、ネットや電話などで通販するにしてもそれに相当する広告宣伝費が大きくのしかかってくる。

契約上は直販にして、小売先と直接製品・サービスの契約を締結する一方、代理店に小売先の紹介・仲介を委託するパターンも考えられる。この場合は、積極的に代理店が小売先を紹介したくなるような仕組みづくりが必要になる。紹介料や、小売価格のレベニューシェアと言った直接的な利益還元の他、紹介の手間がかからないような手離れの良い製品・サービスにすることが重要。

中国では、都市展開、地域展開すると、物理的に遠くてカバーしきれないことに加え、性質的にも全く違う商圏・文化になってしまうため、仕組みとして広がるような設計が重要。

話す相手の格と権限

中国ビジネス関連本にもよく書いてあることだが、ビジネスを話する場合の双方の格が重要。

決して、年長者と話をするといった年齢や、日本的な「部長」といった表面上の肩書が重要ではなく、実質的にも形式的にも決定権があるかどうかが重要。同じ格、同じ権限者どうしのミーティングを設定しなければ意味が無いし、中国人も本気でミーティングをしない。

伝統的な業種や国有企業との話し合いならまだしも、ビジネス環境の変化が激しいネットなど新興系の業界においては、誰と話をするか、というのが非常に重要。たとえ大企業に所属していても、案件を動かす権限のない単なる担当者が、中國のベンチャー企業のCEOクラスに会いに行っても会ってもらえない。もしくは、権限が無いと見透かされたとたんに相手にされなくなる。