専門家の使い方

弁護士でも会計士でも、税理士でも、コンサルタントでも、専門家を使うのは難しい。

例えば、弁護士という資格を活かして他の人よりも各所への問い合わせがしやすいことは事実だが、だからといって何でもできるわけじゃないし良いアイデアが出てくるという訳でもない。自分自身の依頼したいこと、調査したいことを明確にして、きちんとその経験なりネットワークのある人に頼まなければ時間とお金の無駄になってしまう。

中国でも同じで、新しい領域でのビジネスのFeasibilityを確かめたいとき、取り組もうとしている投資スキームの法的妥当性を検証したいときに、漫然と大手コンサルティング会社や弁護士事務所に聞くだけではなく、きちんと担当者・担当弁護士まで指定して依頼できると調査結果の正確性も上がる。そうしたときに有用なのはやはりネットワークになるので、常日頃から外部専門家とのネットワークを維持し、誰が何の専門家であることを把握しておくことが必要である。

コピー天国でイノベーションが出てくる

知的財産を権利として守らない社会は困るが、良いもの、成功しているものを何でもコピーする市場は時には強さを発揮する。

中国のベンチャー企業は、自分自身のビジネスモデルや製品・プロダクトが真似される可能性のあることを前提に事業推進を行うから、そのスピード感はすさまじい。唯一ともいえる差別化がスピードになるからだ。他社よりも早く動いて一定規模の市場シェアを握る、それが参入障壁になるという考え方だ。ただ、一定規模の市場シェアと言っても、市場が巨大であるためにマーケットリーダーとなるほどのシェアを握ることも非常に困難である。Grouponモデルと言われる共同購入というビジネスモデルが流行った時、中国には一時1,000を超える類似サイトができた。その後、同業同士での買収や自然淘汰により美団Meituanというサイトが生き残った。

そういった市場の中で消費者は巧みに使いやすいサービスに簡単に移っていくために、今や単純なマネだけでは生き残れないのは誰しも知っているので、企業側も次から次へと便利なサービスを打ち出す。便利さだけで言えば、日本やアメリカよりも便利なサービスはたくさんある。WeChatはその最たるもの。

コピー前提だからイノベーションが生まれ、巨大なベンチャー企業が誕生し、結果的に社会として強くなっていく。

中国企業も待っている

中国企業も日本企業との提携を待っている。日本のプロダクトを中国で展開したいと思っている。中国の製品を日本市場に広めたいと思っている。

ただ、そのやり方が分からない企業が多く、何となくチャンスはありそうだからやりたいという「提携以前」の企業も多い。具体的にプロダクトやビジネスプランを持っている企業は少なく、何かできそうというだけの企業が多い。こうしたところの課題やニーズを一つ一つ紐解いていけばチャンスは多い。

自分自身にどういう価値があって、相手方に何を求めるか、それを検討すれば、組める相手は増えてくる。組み方も販売提携から資本提携まで様々ある。

中国企業もビジネスでやっている訳だから儲けを重視することは確かではあるが、日本企業をだまして儲けてやろう、という観点で最初から物色している訳では無い。お互いに通常のビジネスベースに乗る話かどうか、率直に議論すればいい。

価値提供できるかどうか

市場規模とか市場の成長性とかももちろん大事ではあるのだが、やはり一番大事なのはきちんと価値提供できるかという点。

ターゲットとする顧客に対してきちんと価値提供できればビジネスとして生き残っていけるし、成長もできる。価値提供できているかどうかは、提供する側が決めるものではなく、受け取る側が決めるもの。きちんと顧客の声や反応を見て、価値提供ができているかを計測しなければならない。

時には、顧客が必要としているものを顧客自身が認識していないかもしれない。顧客が価値だと思っていることが、本当は大した価値が無いかもしれない。それでもきちんと価値を見極め、提供して、それに対して価値があることを認識してもらう。

価値提供をしたうえで、中国という高成長、大規模な市場であれば、さらにそのビジネスの成功確率は高まっていくし、ビジネスの成長スピードや規模も日本の比ではない。土台にあるのはやはり価値提供できるかどうか。

解決策よりも課題

日本でも中国でも、新規事業を考えるときもベンチャー投資を考えるときも、解決策よりも課題が重要と言われる。

とある機能を使ってどのようにビジネス化していくのかを考えるのは難しい。どんなものにでも使えそうに見えるし、誰も要らないようにも思える。お金を払っても欲しいと思えるような機能を考えだすというのは難しい。それよりも、困りごと、課題を見つけ、それを解決することでビジネスにしていったほうが考えやすいし立ち上がりやすい。顧客にとっても、その問題が大きければ大きいほど対価を払うインセンティブがわいてくる。

その点、成熟した日本市場よりも、中国のほうが課題を見つけやすい。確かに、北京や上海などの大都市は課題があってもそれに対するソリューションを提供する人は多いが、それ以外の都市ではまだまだ社会・生活向上のための課題は山積している。それをうまく見極められれば十分大きなビジネスになる。海外事業展開のチャンスがある。

こんなこともあんなこともできる、と機能面やソリューションを強調するよりも、どういう問題を解決したいのか、より明確な課題意識を持ち、マーケットに問うことが重要。

ビジネスのための起業

中国では、儲かるからやる、というタイプの起業が多い。

花が好きだから花屋を開く、接客や料理が好きだからカフェを開く、という自己実現タイプの起業は少ないように思う。市場が成長しているから、色々な分野でビジネスチャンスがあるのであろう。一方、長期雇用を保証している大企業が多いわけでもないので、給与所得に自分自身の生活を依存することが合理的ではない。給料アップを目指した転職が多いのもその表れであろう。20代や30代の企業勤めの若者でも、既に1~2社起業を経験していることも珍しくない。

自己実現よりも、ビジネスとしての生活としての起業家が多いので、きちんとキャッシュや利益が還元できる仕組みさえ作れれば、様々な場所にビジネスパートナーになりうる人がいる。

代理店か直販か

製品・サービスの販売においての仕組みづくりは注意深く設計しなければならない。

代理店モデルを採用した場合、代理店は仕入価格と小売価格の差額で儲けられるため、一見商売の自由度が広がるように思える。が、製品提供側からすると、代理店にとにかく大量に売り込むことが目的化しかねないため、大量の在庫が代理店に滞留し小売先に製品が届いていないリスクが生じる。

直販を選択した場合、届けたい消費者に確実に届くことを確保できる。一方、自社で営業部隊を持つか、ネットや電話などで通販するにしてもそれに相当する広告宣伝費が大きくのしかかってくる。

契約上は直販にして、小売先と直接製品・サービスの契約を締結する一方、代理店に小売先の紹介・仲介を委託するパターンも考えられる。この場合は、積極的に代理店が小売先を紹介したくなるような仕組みづくりが必要になる。紹介料や、小売価格のレベニューシェアと言った直接的な利益還元の他、紹介の手間がかからないような手離れの良い製品・サービスにすることが重要。

中国では、都市展開、地域展開すると、物理的に遠くてカバーしきれないことに加え、性質的にも全く違う商圏・文化になってしまうため、仕組みとして広がるような設計が重要。

チャンスしかない!?

「最近中国で面白いビジネスは?」と聞かれることがよくある。

漠然と聞かれても困るのだが、成熟している日本から考えると、理解できなくもない質問。なぜなら、新しい領域、新しいモデルでビジネスを構築していかないとなかなか成功にたどり着かないから。

でも、中国の場合は、市場自体が成長しているし、日本以上に自由競争の部分もあるので、至る所にチャンスがある。13億人もいる市場だから、同じようなチャンスを狙ってくる競争相手も多いが、それでも考えれば考えるほど、いろんなところにビジネスチャンスはある。

単に「面白いビジネス」を漫然と探すのではなく、特定の領域であっても、既存のビジネス領域であっても、やり方によっては、市場の切り込み方によってはまだまだチャンスはある。

オンラインからオフラインへ

これまでの中国のネット企業は素早くネットサービスを開発し世に出し、とにかくユーザー数を稼ぐべくマーケティング費用に膨大なお金を投じていた。ユーザー数が増えれば、それを価値として見てくれる投資家がいたから、資金調達をすることでまたユーザー数獲得競争に乗り出せた。そして新たに増えたユーザー数をアピールしてまた資金調達し、ユーザー数獲得にお金を使い。。。

そういうネット企業が最近はオフラインの営業チームを作ってユーザーを増やし始めている。オフラインだけだとユーザーのスイッチングコストが低いが、オフラインでのつながりができるとユーザーによるサービスへの依存度がより高くなる。別の競合サービスへの流出も防げる。

ビジネスモデルとマネタイズ方法

中国のネットベンチャーでもその価値提供の方法はさまざま。

たとえそのソフトウェアに競争力の源泉があったとしても、何かしらのハードを売ることが買う側としてお金を払いやすい。とはいえ、ハードもすぐに真似され追いつかれて、分かりやすい差別化を維持し続けるのは難しい。

そういう厳しい状況で戦っている中国のベンチャー企業はビジネスモデルもマネタイズ方法もかなりの柔軟性が要求される。もちろん、そういう世界に飛び込もうという日本企業にとっても。