法律と実務と案件の中身と

中国のビジネス推進において留意すべきことの一つに、法律と実務と案件の中身が「異なる」ことがある、ということである。

インターネットビジネス従事者にはよく知られるICPライセンスであるが、法律上は外資は過半を超えなければ良いと読める。ただ、実務は少し異なり、外資が少しでも入っているとその企業のライセンス申請は認可されない。なので、ネットビジネスをやろう/中国のネットビジネスに投資しようとすると、いわゆるVIEストラクチャーを組む必要が出てくる。

ただ、弁護士に正面から相談しに行くと「法律上は外資も認められていますから、わざわざ特別なストラクチャーを組む必要はありませんよ」と言われる。ここが、中国ビジネス経験者といわゆる日本本社との食い違いポイントとなる。「実際にはできません」という担当者と「弁護士は良いと言っているじゃないか」という本社。実際にやってみればわかるのだが、そう簡単にライセンスは下りない。当局も法定されていない以上「外資はダメ」とは言わず、申請からほぼ無期限の「審査期間」に入る。

もう一つ留意すべきは、案件の中身の精査である。中国もグローバル化の流れに乗り、各方面で規制緩和されている。「某市の某特区で外資のビジネスも可能になった」「実際に1号案件も出ている」という話を聞くことがある。

これもよくよく1号案件の中身を聞くと米国市場に上場している中国企業の子会社であったりもする。米国に上場しているのであるから純粋な中国企業ではない。しかし、だからと言って、そういう子会社と(純粋)日本企業の取り扱いが同じようになるかどうかは分からない。上記の通り当局での取扱いが異なることは十分想定される。

前例が無い、もしくは少ない案件については、政府系のコンサルティング会社等を使って、詳細に事前にビジネス推進の可否を調査する必要がある。

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市場の把握

中国の市場を把握するのは難しい。国家の統計もあるし、各種団体・協会のデータも存在するのはしているが、数字のズレが生じるのも事実。様々な調査会社もあるが、国土が広い分、きちんと把握しようとすると調査費用も馬鹿にならない。

ネット社会がどんどん進みサービスが充実して、消費者の行動が(プライバシーが守られた状態で)把握できるようになれば、消費者関連のデータの正確性も向上するのかもしれない。

その状態になるまでは、各種データや、調査、肌感覚などを総合的に駆使して市場を把握するしかない。

【参考記事】Baidu Creates Own Indexes to Paint Picture of China’s Economy

競合の概念

事業戦略を立てるにあたって競合の動きに気を配ることは大切だが、どこまでを競合として考えるかは意外に難しい。単一プロダクトの競合状況のみにとらわれていてはダメであることは言うまでもない。今や資本が自由に動き回り、買収や合併が頻繁に行われる状況になっていて、競合とは思っていないところが突然自社の市場を脅かすこともある。

特に、中国のネット業界はめまぐるしい。

BATと呼ばれる巨大ネット企業が自社内の新規事業はもちろん、外部のベンチャー企業への投資や買収を積極化させているので、いきなりBATが競合になることもある。強大な資本力を背景に、その経済圏を拡大させている。だからと言って、最初から「BATが乗り込んで来たらどうする?」と思考停止に陥りそうな仮定をしてしまっては元も子もない。

【参考記事】ウーバー、中国事業撤退 現地最大手に売却 自力開拓を断念

話す相手の格と権限

中国ビジネス関連本にもよく書いてあることだが、ビジネスを話する場合の双方の格が重要。

決して、年長者と話をするといった年齢や、日本的な「部長」といった表面上の肩書が重要ではなく、実質的にも形式的にも決定権があるかどうかが重要。同じ格、同じ権限者どうしのミーティングを設定しなければ意味が無いし、中国人も本気でミーティングをしない。

伝統的な業種や国有企業との話し合いならまだしも、ビジネス環境の変化が激しいネットなど新興系の業界においては、誰と話をするか、というのが非常に重要。たとえ大企業に所属していても、案件を動かす権限のない単なる担当者が、中國のベンチャー企業のCEOクラスに会いに行っても会ってもらえない。もしくは、権限が無いと見透かされたとたんに相手にされなくなる。

WeChat ID

直接ネットビジネスではなくとも、ネットと関わらないビジネスなんて無いし、名刺交換代わりにWeChat ID交換だし、中国ビジネスでWeChatをやらない理由が無い。

データファイルの交換や決済サービスははもちろんのこと、WeChat自体も様々な機能を提供し続けており、ますます便利になっている。簡単な議論なら仕事でもWeChat上のグループチャット機能で済ませてしまうことも多い。

WeChatへの最適化

中国版LINEと言われるWeChat。

だが、LINE以上にユーザー数もあるし、様々な機能を次々と開発してどんどん便利になっている。中国でネットビジネスをする場合にはWeChatとの連携を前提にした機能開発や最適化したサービスを考えたほうがうまくいく。

Tencentも自身の経済圏を広げていくためにWeChat関連のサービスには積極的に投資している。ベンチャー企業にとってもTencentからの出資受け入れが更なる成長につながっていく。