新規事業の社内基盤

新規事業を始めるときは社内的基盤がしっかりしていなければならない。

新規事業は直ちに(経済的)成果を出すことは難しいので、すぐに「必要か?」という(社内政治的)議論に巻き込まれやすい。企業というビジネス主体でやっている限りは、売上や利益を上げる部門の力はやはり強く、そうでない部門はその存続も含め基盤が弱くなりがちである。「すぐには売上/利益を求めない」として始める新規事業も、初期の段階からその(経済的)基盤づくりを見据えた動き方をしなければ、進めていく過程で「梯子外し」に逢いかねない。
ベンチャー企業であれば、すぐに売り上げをあげなくても、その将来性を見込む投資家が資金を提供してくれるので経済的基盤の安定化を図れる方法が売上以外にもある。が、企業体のなかの新規事業部門は資金調達先が自社しかないので、交渉力が圧倒的に弱い。

新規事業部門に行く人も、その新規事業部門の社内的基盤をしっかり見極めなければならない。単に「新しいことができそうだ」で異動/参画すると、新規事業の醍醐味を味わう前に部署自体が無くなってしまいかねない。

CVCの使い方

一つの方法論であらゆる問題を解決することはできないが、それでもCVCというのは多くの問題を解決できる方法だろう。

Financial Returnを追求するのか、戦略的な意図(事業部門とのシナジーなど)を追求するのか、その両方をバランスさせるのか、CVCの目的を明確にする必要があることはもちろん大切である。
また、いわゆるR&D部門やM&A部門といった企業内の他の部門との連携も重要である。最新のビジネストレンドや情報収集を目的としてR&D部門に還元することや、良さそうだけれどもいきなり100%買収しない場合に少数株主として出資するなど、活用方法はさまざまである。その場合には、単なるCVC以上の役割が必要になるので、部門間の調整を図ることができる組織設計が必要である。

きちんと組織設計すれば、CVCというのは強力な武器になる。

【参考記事】Corporate venture capital can pay, but only if you get the structure right
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専門家の使い方

弁護士でも会計士でも、税理士でも、コンサルタントでも、専門家を使うのは難しい。

例えば、弁護士という資格を活かして他の人よりも各所への問い合わせがしやすいことは事実だが、だからといって何でもできるわけじゃないし良いアイデアが出てくるという訳でもない。自分自身の依頼したいこと、調査したいことを明確にして、きちんとその経験なりネットワークのある人に頼まなければ時間とお金の無駄になってしまう。

中国でも同じで、新しい領域でのビジネスのFeasibilityを確かめたいとき、取り組もうとしている投資スキームの法的妥当性を検証したいときに、漫然と大手コンサルティング会社や弁護士事務所に聞くだけではなく、きちんと担当者・担当弁護士まで指定して依頼できると調査結果の正確性も上がる。そうしたときに有用なのはやはりネットワークになるので、常日頃から外部専門家とのネットワークを維持し、誰が何の専門家であることを把握しておくことが必要である。

市場の把握

中国の市場を把握するのは難しい。国家の統計もあるし、各種団体・協会のデータも存在するのはしているが、数字のズレが生じるのも事実。様々な調査会社もあるが、国土が広い分、きちんと把握しようとすると調査費用も馬鹿にならない。

ネット社会がどんどん進みサービスが充実して、消費者の行動が(プライバシーが守られた状態で)把握できるようになれば、消費者関連のデータの正確性も向上するのかもしれない。

その状態になるまでは、各種データや、調査、肌感覚などを総合的に駆使して市場を把握するしかない。

【参考記事】Baidu Creates Own Indexes to Paint Picture of China’s Economy

中国ビジネスの強さ

中国は高成長を続けているうえに、(国土が)広く(人口が)多い。

純粋に市場が大きいということの力は大きい。多少の人が金持ちになって豊かな暮らしをしても、まだまだそのレベルに達しない人がたくさん存在している。中国の起業家に「そういうサービスの競合が出てきたらどうする?」と聞くと、「中国は広い。いくらでも市場はある。」と返ってくることが多い。もちろん、ビジネスをするにあたって市場規模や競合状況を十分に検討しなければいけないが、日本やその他の先進国とは違う前提条件でビジネスが進んでいることも十分認識しなければならない。

中国のビジネスチャンスの多様さ奥深さは、把握しきれないほどまだまだあると言える。

面積と人口とを有する国土は、本来の戦闘力を賄う資源であるばかりでなく、それ自体が戦争において効力を発揮する量の有力な部分をなすのである 【p.39 「戦争論(上)」 クラウセヴィッツ 岩波文庫】

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ビジネスを成功させるのか、プロセスを守るのか

新規事業開発や、海外事業への取り組み方を見ていると、ビジネスとして成功させることを目的としているのか、プロセス(案件の進め方)を守ることを重視しているのか分かりにくい企業が意外に多い。自分たちのやり方や、社内的に説明しやすいプロセスを守ろうとするあまり、ビジネス環境に対応できずに、結果的に成功確率を下げていることになっている。

社内的に踏襲されているやり方でやると、共感は得やすいし、予算など社内的資源を得やすいかもしれない。しかし、ビジネス環境は常に変化するものであるし、自社のステップや検討プロセスの結果を待ってくれるわけではない。プロセスAが達成されたら/結果が出たら次を考えたい、ということは一見わかりやすいロジックではある。しかし、「Aの次」を考えつつAを進めていかなければ、準備など到底間に合わないし、せっかく波に乗ったAの勢いを殺しかねない。

自分たちにわかりやすいプロセスを優先してビジネスチャンスを逃していては本末転倒としか言えない。

競合の概念

事業戦略を立てるにあたって競合の動きに気を配ることは大切だが、どこまでを競合として考えるかは意外に難しい。単一プロダクトの競合状況のみにとらわれていてはダメであることは言うまでもない。今や資本が自由に動き回り、買収や合併が頻繁に行われる状況になっていて、競合とは思っていないところが突然自社の市場を脅かすこともある。

特に、中国のネット業界はめまぐるしい。

BATと呼ばれる巨大ネット企業が自社内の新規事業はもちろん、外部のベンチャー企業への投資や買収を積極化させているので、いきなりBATが競合になることもある。強大な資本力を背景に、その経済圏を拡大させている。だからと言って、最初から「BATが乗り込んで来たらどうする?」と思考停止に陥りそうな仮定をしてしまっては元も子もない。

【参考記事】ウーバー、中国事業撤退 現地最大手に売却 自力開拓を断念

協会の使い方

業界団体である各種協会の主催する研修視察に参加してみてもなかなかビジネスにはつながらない。

協会という性質上、幅広い参加者どうしの交流会になってしまい、ピンポイントで自社の求める企業やビジネスチャンスに出会えることが少ない。何となく「知見が広まった」で終わってしまう。協会はいろいろな会員情報にアクセスできるはずであるが、コンサルティング会社やビジネスを作ることが目的ではないので、会員企業の困りごとを紐解いてビジネスに仕立て上げるほどの能力を持っている訳では無い。

日本でも中国でも協会の主催する日中企業交流会がいまだに多い。そうした研修に漫然と参加するよりも、むしろ自社で戦略をしっかり練って、コンタクトしたいターゲットを定めたうえで、そこにネットワークを持っていそうな協会に紹介をお願いするくらいがちょうどいい。

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持分比率の増減と時価総額の増減

・増資に参加しなければ株式の持分比率は下がる。
・既存株の譲渡では当該会社の資金調達にはならない。
・アップラウンドであれば持分の価値総額は上がる。

ベンチャー企業に投資する際には、特にこの3つの事実とそれぞれの関係性を理解しておかなければならない。
ベンチャー企業は事業が未成熟であるために、増資を常に考えなければならない。本業で(売上など)資金流入が少ないために基本的に資金不足になりがちである。一方、事業拡大などやりたいことはたくさんあるために事業資金は必要となる。

ベンチャー企業が投資家から資金調達をするのは、通常、新株の発行を伴うことが多いので既存株主がその資金調達ラウンドに参加しなければ既存株主の持分比率は下がる。
ここで、既存株主が持分比率を維持するために、(創業者など)他の既存株主から株式を譲渡してもらうことが考えられる。ただし、ここで支払われるお金はベンチャー企業自体には入らないので、将来的な事業成長のためには使えない。譲渡元の株主に現金が入るだけである。
一方、持分比率が下がったとしても、新規の資金調達がアップラウンドであれば=株価(時価総額)が上がっていれば、持株の価値の総額は上がっており、投資としては順調に推移していると言える。