代理店か直販か

製品・サービスの販売においての仕組みづくりは注意深く設計しなければならない。

代理店モデルを採用した場合、代理店は仕入価格と小売価格の差額で儲けられるため、一見商売の自由度が広がるように思える。が、製品提供側からすると、代理店にとにかく大量に売り込むことが目的化しかねないため、大量の在庫が代理店に滞留し小売先に製品が届いていないリスクが生じる。

直販を選択した場合、届けたい消費者に確実に届くことを確保できる。一方、自社で営業部隊を持つか、ネットや電話などで通販するにしてもそれに相当する広告宣伝費が大きくのしかかってくる。

契約上は直販にして、小売先と直接製品・サービスの契約を締結する一方、代理店に小売先の紹介・仲介を委託するパターンも考えられる。この場合は、積極的に代理店が小売先を紹介したくなるような仕組みづくりが必要になる。紹介料や、小売価格のレベニューシェアと言った直接的な利益還元の他、紹介の手間がかからないような手離れの良い製品・サービスにすることが重要。

中国では、都市展開、地域展開すると、物理的に遠くてカバーしきれないことに加え、性質的にも全く違う商圏・文化になってしまうため、仕組みとして広がるような設計が重要。

チャンスしかない!?

「最近中国で面白いビジネスは?」と聞かれることがよくある。

漠然と聞かれても困るのだが、成熟している日本から考えると、理解できなくもない質問。なぜなら、新しい領域、新しいモデルでビジネスを構築していかないとなかなか成功にたどり着かないから。

でも、中国の場合は、市場自体が成長しているし、日本以上に自由競争の部分もあるので、至る所にチャンスがある。13億人もいる市場だから、同じようなチャンスを狙ってくる競争相手も多いが、それでも考えれば考えるほど、いろんなところにビジネスチャンスはある。

単に「面白いビジネス」を漫然と探すのではなく、特定の領域であっても、既存のビジネス領域であっても、やり方によっては、市場の切り込み方によってはまだまだチャンスはある。

内資化

中国のベンチャー企業の流行の一つは「内資化」。

今までは中国国内の投資家層が成熟していなかったため、米国など海外の投資家から資金を調達せざるを得なかった。一方、ネットや金融サービスなど、外資の投資が規制されている業界も数多くある。これに対する一つの解が、WFOEストラクチャーやVIEストラクチャーと呼ばれるものであった。

しかし最近は、中国国内の投資家市場の厚みが増し、わざわざ海外から資金調達する必要が無くなってきた。特に、中国国内市場を対象としたサービスを提供するベンチャー企業にとっては、海外の投資家よりも中国国内投資家のほうがより正確に、より高く、そのビジネスを評価してくれる。そして、中国国内の株式市場の高揚。

こうしたことから、初めから中国国内投資家のみを受け入れるベンチャーも出始めている。そして、過去に1~2度海外投資家から資金調達したベンチャー企業も、WFOEストラクチャーを止めて純粋な中国内資企業になろうとしているところも多い。

話す相手の格と権限

中国ビジネス関連本にもよく書いてあることだが、ビジネスを話する場合の双方の格が重要。

決して、年長者と話をするといった年齢や、日本的な「部長」といった表面上の肩書が重要ではなく、実質的にも形式的にも決定権があるかどうかが重要。同じ格、同じ権限者どうしのミーティングを設定しなければ意味が無いし、中国人も本気でミーティングをしない。

伝統的な業種や国有企業との話し合いならまだしも、ビジネス環境の変化が激しいネットなど新興系の業界においては、誰と話をするか、というのが非常に重要。たとえ大企業に所属していても、案件を動かす権限のない単なる担当者が、中國のベンチャー企業のCEOクラスに会いに行っても会ってもらえない。もしくは、権限が無いと見透かされたとたんに相手にされなくなる。

インセンティブ設計

中国ビジネス担当者と、その担当者が中国国内で実際に事業運営をしていくうえでのインセンティブは異なる。

中国ビジネスを構築しビジネスを大きくしていこうという大きな視点で見ている担当者にとっては、目の前の一つの契約を獲得するモチベーションは大きくないかもしれない。その契約獲得ができないのではなく、それをすることは中国ビジネス構築担当者の役割ではないから、それを自分がやってしまってはビジネスが広がらないことを知っているから。

それぞれの階層でのインセンティブ設計が重要であるのに、多くの日本企業できちんと設計されず、戦略構築もその執行もごちゃまぜにして担当者に割り振られている。

ベンチャー起業家の事業計画

ベンチャー企業の事業計画は大部分が創業チームの「想い」。何年も同じ事業をやってきた大企業の事業計画とは違って全ての前提が大きく変わりうる。

そうした中で、創業チームから出された事業計画をどう読み解くか?

全てが変わりうる前提で、それでも創業チームとして何をKPIにしているのか、それがどう変わる可能性があって、変わった時の対応策が見えているか?

大きなビジョンを持って起業しているはずのベンチャー企業だが、単なるビジョン以上の細かい計画、ステップがあるか、二手先まで見てるのか三手先まで見ているのか。そうした起業家を見きわめるのが投資前のDDの一つ。

資金も時間も辛抱強く待てるか

ベンチャーに投資すると、資金的にも時間的にも、成功と呼べる段階まで辛抱強く待たなければならない。

シードやアーリー段階で投資をすると、当初は売上やキャッシュイン無く資金を使うばかりですぐに資金繰り問題に直面する。追加で資金を入れられるだけの予算を当初出資時から見込んでいるか、新たな投資家を呼び込むだけの力があるか、資金面でのサポートは重要。

Exitまでの時間は平均して数年かかるから、その間を待つこと、待てることもベンチャー投資家として重要な性質の一つ。

成長著しく、手っ取り早いリターンを狙う中国でも、数年・数億円の「余裕」があることが重要。ベンチャー投資するとはそういうこと。

ホームラン狙いの投資

いろんな業界にあるセンミツという言葉。ベンチャー投資でも同じ。

資金調達したいベンチャー企業は山ほどあり、「投資してるよ」というとどんどん案件がやって来る。そうした中でも「絶対に成功する」と信じられる案件に巡り合えるのは本当に少ないし、巡り合えても投資家同士の枠の取り合いも激しい。成長著しい中国では、起業家として成功しようという人は多く、投資家としてひと山当てようという人はさらに多い。

こうやって何とか投資できたとしても、本当に成功するのは10件に2~3件。成功した案件で失敗案件を賄おうとすると5~6倍のリターンが必要。5年で5倍の投資とはIRR40%。

それくらい大きなリターンが見込める案件のみに投資しなければベンチャー投資ビジネスとしては成り立たない。

初期段階の企業に投資するベンチャー・キャピタルは、大きな問題を見つけ、それを解決するという目標を掲げて、相当のリスクを取ることを誇りにしています。次なるビッグ・チャンスを求めて、つねにアンテナを張り巡らしています。小さな問題を徐々に解決していこうという姿勢とは百八十度違います。【「20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義(電子版)」 ティナ・シーリグ CCCメディアハウス】

ビジネスリスク感度

中国でのビジネス上のリスクと日本でのビジネス上のリスク。言葉は同じだが、地理的な違いで意味は異なる。そのリスクを見る立場が違えばその意味は異なる。

単なる「中国ビジネスリスク」として思考停止してしまうか、それをきちんと紐解いていくか、それにより対応策は増えていき、取れるリスクの幅は広がる。「中国ビジネスは怖い」「中国は分からない」として、「やらない」とか「もっと調査してから」と判断することも可能だが、それによって失っているビジネスチャンスをきちんと評価したほうが良い。

中国市場は大きいし、今なお成長している。ビジネスで儲けたいという感覚は何ら日本のビジネス界と変わらない。リスクとチャンスをきちんと評価しなければならない。

資金調達条件の流行り

ベンチャー企業の資金調達条件にも流行がある。

主に投資家のニーズによって流行りが出てくるものと思うが、事業会社系の投資会社なら投資条件にプロダクトの作りこみ度合いや顧客数の増加を条件に投資を決める。早く上場させたいVCや証券会社系の投資会社なら上場基準を充たすために売上や利益目標を条件に投資を決める。

単に事業計画上の目標とすることもあれば、事前に決めた条件を達成しなければ調達株価を下げるなどの資金調達条件を直接変えることもある。

ベンチャー企業側も投資家側も流行を認識して柔軟に対応していかなければビジネスにも乗り遅れてしまう。