した方が良いことはやらない

事業開発、特に中国での事業開発については、しなければいけないことに集中し、した方が良いことはやらない決断が必要。

市場の変化は大きいし、日本での想定が通じないことが多い。そうした状況下では、あらゆる想定をして計画通りに進めていくことは不可能に近い。それならば、しなければいけないことが出てきたときに、その事柄にいかに早く適切に対応するかを考えたほうが良い。

詳細な市場調査より、実際に売る。売ってみればどれくらいのニーズがどこにあるか分かる。完璧なプロダクトを作るより、まずテストでもなんでも市場に出してみて問題が出たら修正したほうが、マーケットニーズに合った商品を作ることができる。真似されない対策をあれこれ考えるより、真似されたらどうするかを考える。

もちろん、今、対峙している事象がしなければいけないことなのか、した方が良いことなのか、その判断については、経験や知見も必要になる。そうした知見を基に、的確にしなければいけないことに集中しなければならない。

内資化するとは

中国の投資において最近の潮流のひとつ内資化。規制業種に対する外資受け入れの一つの方法として広く使われているWFOEストラクチャーを解消して中国人・中国法人のみの株主構成にすることを言う。

手続きとしては、
①中国内資企業が資金調達主体であるVIEの100%子会社(これもVIE)を買収
②買収資金を受け取った資金調達VIEを解散・清算
である。この過程においては、各種契約文書作成のほか、当局の手続きも必要なため数か月~1年以上かかる。

外国人株主としては、このタイミングでExit(株式売却)してしまうか、代理保有のような形で実質的に継続保有するか、大きく2つの対応がある。

デジタル、シンプルなインセンティブ設計

中国でビジネスを作っていくとき、極力デジタルなシンプルなインセンティブ設計にしたほうが良い。

日本本社からすると距離も離れるし、文化も違う、管理する側は時には中国ビジネスを知らないこともある。そうしたときに定性的な要素の多い評価方法や、無理に細かいインセンティブ設計にしてしまうと、実情に合わせた事業運営ができないばかりか、日本本社と中国現地ビジネス担当者との間での齟齬が大きくなってしまう。攻略すべきは中国市場なのに、その前の戦略立案や方針策定で疲弊してしまう。

わざわざ中国でビジネスをすることを決めたのだから、小さなビジネスではなく大きなビジネスを作ろうとしているはずである。その時には大きな方向性やターゲットとするマーケット像を定めればよく、細かいステップ論はその時々で対応・修正すればよい。

ファンド投資か個社投資か

投資の目的が違えば、投資の方法も異なる。目的を決めなければ投資方法は決まらない。

中国でビジネスをすることが目的であれば、個社投資のほうが良い。最初のうちは、ネットワークや視野の拡大という意味からファンド投資が有効かもしれないが、実際のビジネスには携われない。GP会社によっては、四半期のレポートのみや年数回の(セミ)アニュアルミーティングのみになって、実際のベンチャー企業、投資先企業との接点を持ちにくい。その点、個社投資であれば、直接株主となるわけだから、ビジネスオペレーションにもかかわりやすい。もちろん、数多くいる少数株主の一人であれば、株主の権利も行使しにくくなるが。

ファンド投資の良さは、儲けにある。中国ローカルのGPが選んだ中国ローカル企業への投資であるから、外国人が選んで投資するよりもその成功確率は高い。効率的に市場の成長性の利益を享受するならファンド投資のほうが良い。

出資を受ける意味

日本でも中国でも有望なベンチャーにはすぐに投資家がコンタクトする。日本人にとって、中国で誰も気づいていない良い案件に一番乗りすることは不可能に近い。そして、すぐに十分と言えるほどの資金が集まってしまう。

では、良い案件に投資するのは無理なのかというと、そんなことはない。

他の投資家に無い、特有の、出資を受ける意味を提示できれば、後からコンタクトしても出資するチャンスは十分にある。投資実行までのスピードであったり、金額の多寡であったり、事業上の価値提供であったり、思考を巡らせれば様々な「意味」を提示できるはず。

ベンチャー側も、出資を受ける意味を求めている。

WFOE化するとは

中国で外資規制がある業種に投資する場合には、WFOEストラクチャーないしはVIEストラクチャーと呼ばれる投資スキームを使って投資する。

実際には下図の通り、左の単純な株主①②と運営会社という状態から、右のようなスキームを構築して実質的な株主になる。SPVやWFOE、矢印で示される契約書等を作って、実質的に運営会社をコントロールするとともにその利益を還元できるようにする。

VIE structure

情報収集としてのファンド投資

市場調査というと、いわゆるコンサルティング会社を雇ったりして、調査を行う。目線を少し変えて、ビジネスチャンスを探るためにファンドに投資するという方法はどうだろう。理にかなっているし、効率的でもある。

ファンドは投資してキャピタルゲインを得ることが目的なので、投資家の興味領域のみに投資をしてくれるわけではない。それでも、投資を通じた情報収集というのは効率的である。投資家には日々投資案件の相談がやって来るし、投資可能性の検討ということであれば会ってくれるベンチャーや企業も多い。

ファンドを選ぶときには、その運用能力の高さや、投資期間中の投資家対応の良し悪しをきちんと見なければならない。最低投資額の設定をしていたり、決まりきった定期報告しかしないファンドもある。一定期間資金を寝かせる余裕も必要になる。

そうした見極めをきちんとしたうえでファンド投資すれば、ビジネスデベロップメントの役に立つし、ファンド期間終了後にはフィナンシャルリターンも期待できる。

PreMoneyとPostMoney

中国に限らない、ベンチャー企業のValuationの計算式は次の通り。

Pre Money Valuation +調達額 =Post Money Valuation

1億円出資して10%の株主になろうとすると、Pre Money Valuaitonは9億円、Post Money Valuationは10億円ということになる。

この水準(9億円)が妥当かどうかというのは、そのベンチャー企業の状態や他社の事例を参考にするしかない。直近で似たようなベンチャー企業がどれくらいの段階でどれくらいのValuationで調達したか。しかも、未上場なのでその情報も噂や不確かな情報であることが多い。ベンチャー企業は利益を上げていない、キャッシュフローはマイナスであることが多いので、DCF的な考え方ではValuationを正当化しにくい。

最近の中国だと、Seed Stageで数千万円(数百万元)、Series A~Bで数億円(数千万元)調達するベンチャー企業が本当にたくさんある。Series C以降になると数十億円も。もちろん、それぞれの段階で次に行けるベンチャーもあれば、行けないベンチャーもある。

ビジネスのための起業

中国では、儲かるからやる、というタイプの起業が多い。

花が好きだから花屋を開く、接客や料理が好きだからカフェを開く、という自己実現タイプの起業は少ないように思う。市場が成長しているから、色々な分野でビジネスチャンスがあるのであろう。一方、長期雇用を保証している大企業が多いわけでもないので、給与所得に自分自身の生活を依存することが合理的ではない。給料アップを目指した転職が多いのもその表れであろう。20代や30代の企業勤めの若者でも、既に1~2社起業を経験していることも珍しくない。

自己実現よりも、ビジネスとしての生活としての起業家が多いので、きちんとキャッシュや利益が還元できる仕組みさえ作れれば、様々な場所にビジネスパートナーになりうる人がいる。

Term Sheet項目

欧米であっても、中国であっても、最近のベンチャー投資の型が定まりつつあるので、中国特有の項目は少ないが、下記のような項目をTerm Sheetで盛り込むことが必要。

・契約者名
・現在の株主構成
・投資金額とValuation
・資金使途
・投資実行条件(Condition Precedent)
・Redemption Right(回购权)
・【業績コミットとペナルティ】
・Dividend Right(分红权)
・【上場条件(Valuation)】
・Liquidation Preference(清算优先权)
・Right of First Refusal(优先认购权)
・譲渡制限
・Preemptive Right(优先购买权)
・Co-Sale Right(共售权)
・情報受領権 Information Right
・Anti-Dilution Right(反稀释条款)
・取締役指名権
・保護条項
・協業避止
・秘密保持
・取引費用
・法的拘束力
・実行意思確認
・裁判管轄・紛争解決